大阪圏における、コロナ禍前後でのキャップレートの推移を、プロパティ別で比較してみましょう。キャップレートとは「還元利回り」や「収益還元率」などとも呼ばれています。「年間純収益÷不動産価格」で算出します。キャップレートにより不動産購入時の投資回収期間を割り出すことができます。
まず、添付しましたグラフをご覧ください。コロナ禍を経ても、順調に下落(価格の上昇)が続いていたのは、ロジスティクス(シングルテナントです。大阪エリアでは、東大阪周辺のエリアの物件が想定されています。コロナ禍を経て物流量がより一層増え、ロジスティクスの重要性は増しています。新型コロナウィルス感染拡大直後の2020年10月時点調査でも、唯一キャップレートは低下を続けていました。ロジスティクスの投資対象としての安定性や流動性の高さが、低い利回りであっても取得をしたい、という投資家の思いを反映させていると言えます。
ロジスティクスの次に、期待利回りが回復したのは、賃貸住宅です。今回発表された最新の2023年4月時点調査でも、賃貸住宅の期待利回りは、前回よりも0.1ポイント下げて4.4%となり、調査開始以来最も低い水準となりました。住宅は、人々の生活にとって欠かせないものであるため、不動産投資家もその重要性を考慮し、賃貸住宅への安定性を評価していると見られます。実際に、2021年4月に行われた同調査における、別のアンケート項目で、プロパティ別の新型コロナウィルスの影響については、「レジデンシャル=賃貸住宅(ワンルーム・ファミリー)」においては、「ネガティブな影響があまりなかった」が68%、「ネガティブな影響が全くなかった」が24%となっており、約9割がレジデンシャル投資において新型コロナウィルスの影響がない、と答えていました。賃貸住宅投資の底堅さが見られます。
オフィス(梅田エリアを想定)も、早い段階で回復し下落傾向に入りました。テレワークなどの普及で足元ではオフィス空室率は上昇傾向にはありますが、優良物件に関しては、国内外の投資家は積極的な姿勢を見せています。大阪エリアに関しては、供給が限定的であることも期待利回りの下落を後押ししています。
一方で、上昇もしくは横ばいが続いているのは、商業施設とホテルです。インバウンド観光需要が大きい関西エリアでは、コロナ禍の影響をダイレクトに受けていると言えます。ホテルはこの度の調査で、2018年10月調査以来の「下落」となりましたが、まだ、コロナ前の水準には戻っていないようです。