今回は、建設工事費と近畿圏の新築分譲マンション価格の推移と比べてみましょう。前回にお伝えした通り、新築分譲マンション価格は、一般的には積算法で価格が決まることが多くなっています。そのため、建設工事費が上昇すると、販売価格はダイレクトに影響を受けます。建設工事費デフレーターと新築マンション価格の推移(両者とも「12カ月移動平均」の値を採用)で相関係数を算出すると、0.943とかなり高い数値が出ました。更に、建設工事費デフレーターの値を先行させて1カ月ずつ時差を設けて相関係数をとった結果が添付したグラフのとおりとなっています。
先ほどお伝えした通り、同時での相関係数も0.943と高いのですが、1年半程度ずらした方がより相関係数が高くなっているのが分かります。つまり、データ上は建設工事費デフレーターが上昇すると(下落すると)1年半程度遅れて新築分譲マンション価格も上昇(下落)するということが言えます。
新築分譲マンション価格の算定には、その他にも金利状況やそこから派生する社会的ムーブメント(「マンションを今購入すべきか否か」という風潮)など社会的・経済的情勢などさまざまな要因が関与してきますが、2023年度に入ってからも建設工事費デフレーターは依然として高い水準となっているため、新築マンション価格の高騰は暫く続くと考えられます。また、新築マンション価格の高騰は、中古マンション需要や住宅購入自体を先送りすることによって賃貸需要へとつながっていくため、引き続き、建設工事費については注視していく必要がありそうです。